『ひまわり』感想

 これは名作です。巧みな心理描写、上手く伏線をばら撒ききれいに回収しています。この手腕は、『Ever17』や『シンフォニック=レイン』級。それだけでも凄いのに、登場人物の10人足らずの思惑が、錯綜して物語を盛り上げます。
 話のメインは2周目のアクア視線の過去編と3周目のアクアシナリオ。非常に面白い。ほとんどのユーザーが絶賛しているのも頷けます。特に真相が見えてくると非常に上手いなと。そして2つの周の登場人物の錯綜した言動、想い。感情を描く作品を主食にしている自分としてはお腹一杯でした。普通のユーザーでも自信を持って、オススメできます。あまり癖がなく進んでいくうちに、物語に惹かれて行きます。そして明かされる謎。主人公陽一が取った行動は・・・アクアの想い、アリエルの想い、そして○お○の想い、さらに上の世代の想い・・・
 物語を進めて行くと感じましたが、「夢」や「想い」は人間にとって希望や良薬か?それとも絶望や破滅に向かう麻薬か?・・・難しいですね。月並みですが夢がなければ人生は色あせたものになる。それは人生を送る原動力になり得る。だが夢に取り付かれた人は?夢破れた者は?想い続けるのは良いこと。それによって人は、幸せになれるのだから。だけど想いによって傷付け合うこともある。思うように生きるのって本当に難しい。
 皆様アクアに目が向いていますが、最後の4周目の明香シナリオの方に目が行きました。それは夢を見続けている子供の物語。そして弔いの物語。少年が大人になる物語。どうしてもほとんどの謎が氷解するアクアですか1つ残された謎があった。アクアをやっていてアレ?と気付いたんですが・・・未来を目指す物語なので最後の締めとして最適ですね。個人的には、これが一番好きです。
 同人で書きたいものを書いたから良いんですよね。商業だとどうしても制約がつきますから。書いた人は本当に宇宙が好きなんだろうな。楽しみながら書いたんだろうなと思います。書きたいものを書くごく当たり前のことですが、それは同人や個人だからできること。商業だと飯を食っていかなければいけないので、書きたいものと利益にどうしても軋轢ができてしまう。同人の利点はそこなんですよね。どうしても商業よりも、コミケがあるとはいえマーケットは狭くなってしまう。でもそれでも書きたいものを誰でも送り出せる。同人の利点ですね。
 『ひまわり』をやっていたら『星空☆ぷらねっと』や『ロケットの夏』がやりたくなりました。ロケ夏は、フルボイス版やってないしな。
 趣味趣向がぶっ飛んでいる私ですが、普通にオススメできる作品。同人で安いのでコストパフォーマンスも良いですし。



つーか、やれ!