生きることは、知とること

 図書館から予約の本のメール。全てで8冊。かったぱしからリクエストしてますから。借りられるのは2週間5冊まで、取り置きも2週間。借りて読んだのは、3冊。ふむ読書メインでないと追いついていきませんね。

 各ライターが自分なりの名馬を書いて「競馬の神様」大川慶次郎と競馬の血統の第一人者山野浩一氏が解説する形。結構マイナーな馬が載っていたりして競馬ファンには一読の感がある。

 秋山氏といえば、河合隼雄林道義氏ともにユング心理学を日本に広めたパイオニアの御三
家。河合さんは、日本人初のユング派の分析家となったので、解りやすくそれでいて学問の世界にも紹介する使命があったのでマルチに動いていました。それを意識してか書き方もだいぶ意識していました。また政府にも貢献して国際日本文化研究センターの創設に携わり(梅原猛氏を煽っていたw)、総理大臣の諮問機関の委員長、最後には文化庁の長官も勤めました。まぁNHKでやっていた対談番組の柔和でいて鋭いこというイメージが強いです。
 林さんは翻訳の仕事が多いイメージ。秋山さんは、主に一般的な方々に紹介してしました。ユングに触れるのは河合さんの主な著さj区を読んで、秋山さんの本で補完して、林さんが翻訳したユングの著作を読むのが良いのかも。3人とも経歴が変わっていること。河合さんは京大数学科を出て数学教師に、林さんは東大法学部卒、秋山さんは禅宗の寺の娘で不幸な結婚をしてその後・・・

 この本は秋山さんの追悼的な本の位置付けになりますね。


 ユングが述べることは、全く荒唐無稽だと考える人もいるだろう。さしあたり、現実の世の中で生きているのに、なんの役に立つのだろうかと疑う人も多いだろう。しかし、この心理学は、現実の世界そのものに疑いを抱き出した人にこそ意味がある。神経症や精神病の境界線といわれ、自分の世界観を失いつつある人には、単なる知的好奇心を超えて、自分の世界を取り戻すための方法として知られている。特に問題もなく日常生活を送っている人でも、ある日ふと、この宇宙の存在を信じられなくなることもあるだろう。限られた生命をもつ生物である人間にとって、例え宇宙が存在しても、いつか無に帰すであろう自分自身に疑いを持つことはないだろうか。ユング心理学がその解決だと言わないし、また宗教のように信じて終わる問題でもない。しかし、この心理学のどこかに、人間の生命とその創造性の秘密が隠されているように思うのは私ひとりだけだろうか。
 ユング心理学を学び始めて20年の歳月がたった。それでも知の集大成としてのユングの著作を読みこなすにはまだ程遠い。又ユングの持った体験のすべてを知ったとは思わない。しかし、ユングがそこでなにをいいたかったのかということだけは、おぼろげにわかりはじめたような気がする。そこには人間のあらゆるドラマの原点が隠されて、ユング自身もその探求の緒についたばかりであった。私はいささかでも彼の道を進めたいと思うし、同行の数多いことを祈るばかりである。


 「魂の実在と死後の世界」の終わりの数行に、秋山先生は「・・・私自身にとっては死と死後の世界は基本的に問題ではない。できることならユングのように、死の直前まで、そして、より徹底して、死の瞬間まで、このようの現実に生き、それを見つめていたいものと思う。・・・生きることは私にとって、知ることであり、自分の外的な状況も内的な次元も、あまりにもわからないことが多く、まだまだ知りたいことがたくさんある」
 「生きることは私にとっては、知ることである。」ということばは、まさに秋山先生の「真骨頂」であって、尽きることのないときめきにも似た好奇心、「光としての知性」が先生の人生だったことを痛感させられます。
 いうまでもなく、秋山先生は日本におけるユング心理学の第一人者でしたし、また先生の後半生の大部分はユング心理学の普及と発展の為に費やされました。しかし、先に書いたことからもご理解いただけるように、先生の思索の範囲はユングだけに尽きるものではありませんでしたし、またユング心理学の理論の実践の内部でも、決して「できあいのユング」のようなもので満足される方ではありませんでした。
 秋山先生はあらゆる権威主義に対して強烈な反抗精神を持っておられましたし、また、何であれ、できあいの思想や技法などを単純に当てはめて物事を理解できるとするような考え方とは、遠くかけ離れておられた方です。自分自身で体験し、自分の頭で考えたことでなければ、本当に納得しない、 秋山先生は最初から最後までそういう態度を貫かれてましたし、また、その意味で、「できあいのユング」的な考え方には常に批判的な態度を明らかにしておられました。
 さらに、同じ意味で、先生は、ユングの直観の基本的な正しさを最初から最後まで指示した上で、それをさらに臨床的にも理論的にも発展させて、場合によっては「ユングを越える」ことも辞さない考えをお持ちだったと思います。(本文より抜粋)

 日本神話の英雄像に絞って心理学的解釈で書かれています。特に父性原理や母性原理似ついての言及が多い。中高生に読んでもらうように読みやすく面白い。

上の続編。今度は女神に絞りました。今回は前書きの通り普通に用語が出るので、多少のユング心理学の知識がないと辛い。よく指摘されますが、日本神話の女神には特異性が強いので興味深かった。