僕たちは限りない可能性を捨て去って唯一の今を選び取っていく。


 ふと見かけた文章で妙に心に残りました。

僕たちは限りない可能性を捨て去って唯一の今を選び取っていく。
その先に、かけがえのない未来があることを信じて・・・


 Leafの作品『Routes』のキャッチコピーです。意味はプレイをすれば解りますが、なかなか深い言葉です。連想したのは、故司馬遼太郎の『坂の上の雲』の登場人物の生き様です。
 ある司馬氏の作品のアンケートによると『坂の上の雲』が、ぶっちぎりの1位だったのが印象的でした。坂本竜馬の『竜馬がゆく』、土方歳三の『燃えよ剣』などのメジャーなものが1位かと思い少し驚きました。このアンケートの対象がどうなのか解りませんが、一般的な読者より司馬ファンかと予想しています。小説として絶筆になり、完成度は一番高いです。
 読み進んで行きますと主人公の秋山兄弟を始め、東郷平八郎などほとんどの軍人たちはなろうと思ってなっていない点です。軍人として日清戦争日露戦争で活躍します。皮肉なことに東大以上に名門だった、陸軍大学、海軍大学を主席で卒業するして恩賜の軍刀銀時計を賜るようなスーパーエーリートたちが、昭和の戦争の中心になる。決して望んでない者が結果を残し、望んで入ったものが亡国の道を先導していく。当然当時の国際情勢が異なるので、安易に比較は出来ません。しかしとても皮肉なことです。
 主役の1人秋山真之は、文学者を目指していましたが貧困な家庭環境のため無料で入れる後の海軍士官学校に。兄の秋山好古は勉学をしたくて無料で入れる後の陸軍士官学校に入りました。前者は参謀として日露戦争の実質上の戦術を練り日本海海戦を勝利に導く。後者は日本騎兵の父として日露戦争で多大な貢献をしました。
 

 世の中はままならないものです。「思うように生きる」ことが、どれだけ困難か。自分がしたい仕事に就いているのは、ごく一部でしょう。それでも自分の望んだ仕事でもプロスポーツ選手のように挫折したり、しがらみがあったり悩んだり、苦労したりしています。他の大部分は、ぶっちゃけ家族を養うため、食べるため、金のために仕方がなく行っています。私もその1人です。その中でも良いことがあることでしょう。人間関係とか仕事の達成感とか。苦しい、困難、楽しくない仕事の中に、少しでも喜びがないとやっていられませんねw

 「秋山好古の生涯の意味は、満州の野で世界最強の騎兵集団を破るというただ一点に尽きている」と賞されているとおり、日本の騎兵の父と言われた。退任前に元帥になる話がありましたが、本人が固辞して故郷の校長になりました。軍人になる前に短期間教員をしていたように、本当は教員になりたかったのかもしれません。それが何かの縁でふと沸いた仕事をしました。それを責任持って成し遂げてから、自分の本来やりたかった仕事をやる。尊敬すべきことだと思います。

 
 現在新卒で入った人間のうち3年間で3分の1が転職しています。キャリアアップの為とか過酷過ぎる仕事環境とかで退職される方がいます。他に自分の合わなかったとか自分と考えるものと、違ったからと辞める人も決して少なくありません。よく3日、3ヶ月、3年といって仕事を辞める時期のパターンです。自分がしたい目標があるなら別ですが、自分で選んだ会社で縁で入りました。ですので5年は続けるべきです。その間人事異動とかで評価されるでしょう。それから考えてもいても良いでしょう。採用する会社も3年以下だと警戒しますし、5年ぐらいだと立派な経験になります。
 明確な目標を立てて具体的な手段を考え、持続する意思で成し遂げる織田信長型が持て囃されています。自分のキャリアアップの為に転職を繰り返して、自分を伸ばして且つ会社に貢献していく。それができれば本当に凄いですが、本当に達成しているのはごく一部だと思います。それはそれで時代の流れで否定しません。でも秋山好古のように自分の望まない仕事も一心不乱になって、実績を残し社会に貢献してから自分したい仕事をする。古くて無骨な生き方ですが、私は惹かれます。自分も望まない仕事ですが、最低5年間は責任持って会社に貢献しようと思います。それから最終的に自分の進む方向を決めたいですね。長い人生に遅い早いはありませんから。