過去と現在の価値観の狭間にて

 来年の大河ドラマは「篤姫」だそうだ。篤姫は落飾して天璋院と名乗って、島津斉彬の養女になりなりそのまた近衛家の養女になり、13代将軍徳川家定御台所になった人物ですね。近衛家名義ですけど将軍家に輿入れした家は、大名家では島津家が唯一ですね。徳川家斉の時は、御三卿の嫡男として将軍の座を想定してなくて偶発的ですけど、篤姫の時は継室として3人目の御台所として政略結婚の意味合いが非常に強いですね。彼女は幕末徳川家特に将軍の私邸である大奥に、強豪な島津家の楔を打つ役割に担いました。
 「大奥」の便乗でしょうけど、2年後までブームが残っているか?「大奥」のようなドロドロ劇でなく、幕末を基調とした話にして欲しいです。以前のように「バカボンド」の人気に便乗して「武蔵 MUSASHI」の二の舞は御免です。

 最近の大河ドラマは、過去の話をしているのに視聴者に共感させる意図か現代の価値観を取り入れ、自家撞着でことごとく失敗する傾向が高い。過去を「評価」するのは結構ですか、過去に現在の価値観で判断するのは馬鹿です。過去の人物は、現代の価値観など知るわけないですから・・・江戸時代に娘を売るのを責めても、言われた当人は困惑するか「そんなの知るか!娘を売らなければ家が、食っていけないんだ。お前がどうにかしてくれるのか?」と切り返されるでしょうね。
 特に酷かったのは「時宗」。父親の北条時頼の時代はかなり良かったのですが、北条時宗の時代になると庶兄が生きているのはまだ良いとします。でも赤マフラー活躍しすぎ・・・時宗は平和平和とのたまっていて、実際の人物像とはかけ離れてしまいました。実際は元に対しルール違反の使者を殺す程の鷹派。元の侵略の為に自らの手を汚すような話にして欲しかった。
 

 良かったのは「葵徳川三代」で俳優が高齢化していますが、血気盛んでマキャベリストの家康役の津川雅彦と弱気で恐妻家だが徐々に将軍の器に収まっていく真の主役の徳川秀忠役の西田敏行、人を食ったようで乳母の愛情が溢れている春日局役の樹木希林の演技が良かったですね。話も家族の話の時に少し現代的価値観を入れてますが、全体的に過去の価値観を再現していました。印象的なシーンは、家康から秀忠に将軍職を譲った時の晩のシーンです。家康は秀忠に「人の上に立つものは、自分の中に鬼を棲むようにしなければならない」と諭すシーンです。最高責任者は、組織を良い方向に導く為に、手段を選ばずに目的を達し自らの手を汚さなければなりません。また、目的の為に非情な決断を下さなければなりません。家康はそれが言いたかったのでしょうね。聞いた秀忠は、恐ろしくなって動揺していました。


 今年の「風林火山」も過去の価値観に近づけてなかなか見ごたえがありますね。主役の山本勘助は、近代的史観と江戸時代の軍学の影響で架空の人物と見られていました。しかし、勘助に関する資料が見つかり実在が証明されました。欧州では聖書の考古学の検証が盛んですが、かなりの部分で実際に起こったことのようです。ノアの箱舟も本当にあったこととか?また旧約聖書ヨシュア記がありますが、牧師が日本人に最も説法したがらないと言われることで有名です。その中で何の罪がなくただ創造主の命令で虐殺された都市エリコは、本当に起こった事件のようです。まぁ記述は大げさに、人物を代表的な人物に置き換えたりしているようです。伝承や伝説も何の根拠もなく否定できませんね。