ひとのかたち その3

 自分にきっかけを与えた物の続きです。今回は歴史関連です。

 知るきっかけは、高校大学と一緒だった友達がこれの読者だからです。その話をしていて理に叶った論証をしていて、それに惹かれて読み始めました。序論の日本の史学の3つの大きな欠陥。

  1. 日本史の術的側面の無視ないし軽視
  2. 滑稽というべき資料至上主義
  3. 権威主義

これには、反論の余地が少ないまっとうな指摘だと思います。史学学会も少しづつ変わりつつあると思いますが、まだ指摘されて完全に払拭されてないことでしょう。本論に入り私でも奇説で少し無理がある部分はありますが、歴史の大きな流れの見方や今の日本の見方などは大いに参考にしております。

 前述の井沢氏のデビューのきかっけになった小説に参考した説を唱えた方で、『逆説の日本史』でも何度か梅原氏の説を踏み台にしている部分があります。そのような関係で代表作の『隠された十字架』『水底の歌』などを読みました。その時は、着眼点の鋭さは凄いけど少し電波がかった人だなというのがその時の感想でした。
 彼の著作を総称して「梅原日本学」とも言い、前述の2つの著作と『神々の流懺』を前期三部作。『海人と天皇』『聖徳太子』『日本冒険』を後期三部作と総称しています。そこまで熱心に読んでいませんでしたが、惰性という感じで読んだのがこの『海人と天皇』でした。読み進めていくうちに彼の世界観に嵌まり始めました。前期に比べ熱気は押さえ気味になり、より理性的に学問的に洗練されて頷いてしまう個所は何度も・・・それで垣間見れたのは彼の人間性についてです。私に非常に似てると思いながら、惹かれていきました。
 それからただの歴史ヲタから彼を通して、様々な学問や創作作品に触れるきっかけになりました。視野を広げた恩人であり、尊敬する先人でもあります。考え方は違う所も多々あります。ですが文化勲章受賞時のスピーチで、「まだ半分しか仕事をしていない」豪語した梅原氏の旺盛なバイタリティにはただただ感服しています。私も知的ながらもあのようなバイタリティが欲しいですね。

 出会いはホンの偶然。テレビで取り上げられたり、永田町で話題になっていることなどは知っていました。しかし、ローマにそれほどあまり関心を持ってなかったので、素通りしていました。そんな時ふと書店で文庫本になった手にとって、試しに1巻でも読んでみるかと読んでました。そしたら、本当にこの人はローマが好きで書いているんだなと思い、様々な着眼点の鋭さにただただ圧巻しました。
 私は結構本を読むときもそうですが創作作品を含め人間が描いた物は、その著作者の人間性や世界観を尊重します。前述の2人もそうですが、例え自分とは異なっても理性的に自分で考えて自分の言葉で語っている人間に惹かれる傾向があります。塩野氏が描くローマ像は贔屓目があると思いますし、すでに指摘されているように間違えている部分があります。
 それでも人間観察、世界観など観察眼の鋭さは感嘆し、ただ歴史として見るだけでなく人生訓として色々と為になりました。先日最終巻に当たる15巻が出ました。1年間に1巻というペースでローマ世界を書き上げた氏にはご苦労様と感謝しています。
 最終巻をただいま読み終わりました。泣いても笑っても最後の巻。そのような感慨を抱きながら、読み進めていきました。読み終わった感想は、やるせなくこれで完全にローマ世界が終わったんだなと。まさに氏らしい終わらせ方でした。