[エロゲー]Memories are here


 『カタハネ』フルコンプ。しっかりとした世界観を下地に、センスが光る作品でした。なりゆきから有名な史劇を大胆にひっくり返す劇を作るために、その裏付けと役者を集めるために旅に出るセロたちご一行様。道中で起こる様々なエピソード。楽しさや途中出会う人との触れ合い、ハプニングと旅の醍醐味を味わいました。途中史劇の元になった出来事を描いたクロハネ編の悲劇が入ります。視点が一定せず随所随所で変わるので、俯瞰的に登場人物を見ることになり物語としての完成度が高くなりました。下手するとユーザーが混乱しますが、これは世界観や物語の方向性がしっかりしているので、幅広く表現することができました。
 
 
 3周するのですが、共通ルートが多くてあまり意味がないかなと思います。3周目のココシナリオのように、一呼吸置いて真シナリオに行くのも演出としては良いかもしれません。しかし2周目はあまり意味がなく重要なのは冒頭のワカバのシーンぐらいで、エロシーンの水増しが狙いかなと穿って見たり。
 声優陣では、若手が頑張りました。2役な上一方の役でその一方を劇中劇で演じるという微妙なことをした安玖深音さんも大変でしょうが、姉弟の2役をした佐本二厘さんは頑張りました。最初気付きませんでした。五行なずなさんも外見の綺麗とかわいいの間のイメージを壊さなかったも意外に大変だったのではないでしょうか。ココ役の成瀬未亜さんも難しい役どころでしたね。セロ役のかわしまりのさんはさすがにそつなく少年役をこなしました。まきいづみさんは無駄に使っているなと思ったら、最後に美味しい所を掻っ攫っていきましたねw
 スタッフロールをみると、途中参加のアンジェリナが主役ですが、これはクロハネ編との兼ね合いでしょう。誰を中心と見るかプレイするユーザー次第ですが、あまり考える必要はないと思いますね。どうせ全てが終われば真の主人公はココで決まりですからw一番注目すべきは構成力。全てのピースが終盤にラストシーンにへと収束していきます。
 

 やり終えて不思議な読後感でした。感動とは異なり、心の底を鷲づかみにされたような感覚。1つの物語を終えた感慨とともに、他に残る正体はなんだろうと考えていました。月並みな表現ですが登場人物の「想い」なのかなと思っています。登場人物にはそれぞれ異なる「想い」がありますが、クライマックスにかけて巧みに収束し、ラストシーンの純粋無垢なココに全てを担わせる。それが妙に印象に残る。そのようなセンスがこのような印象に繋がったのかなと思います。後あのエンディングは、反則気味・・・珍しい演出でした。
 純粋にストーリーだけ見ればそれほど目新しいものではなく、むしろ定番といってもおかしくないものです。ココの存在が大きいのですが、それもそれほど目新しいものではない。冷蔵庫にある食材でも、調理次第アイデア次第で素晴らしい料理になるように、どうユーザーに見せるか?その勝利でしょう。それにはしっかりとした下地とこのメーカーが培ってきた優しい雰囲気も大事な要素でしょう。それがこの作品が成功した原因なのでしょう。このような作品を出しといて残念ながら、Tarteはなくなりましたのが惜しまれます。この構造に似た作品が、何の因果か背景を担当したminoriの『ef - the first tale.』地味な陳腐な内容でもセンス次第では良作になる。話題性や奇抜な設定などで作品を作るのも1つの方法だと思いますが、こうして地道にやるのも方向性としてはアリかなと思います。ただなかなかこういったものは、日の目を見ないのですよね・・・