ある雨の日に・・・

人には、色々な生き方があります。命は、全て違う軌跡を描くものです。
私は、それに干渉する術を知らない。知らなくても良いことだと思います。それに関しては、あなたと同じではないかと。

 悠は。孝一の気持ちを理解していたのだ。もしかしたら、孝一自身よりも、孝一のことをよく理解していたのかもしれない。『パートナーだと思っています』悠は、初めて孝一に会った日、そんな事を言っていた。その事を、孝一は唐突に思い出した。外国ではよく、親しいカウンセラーのことを、『パートナー』と呼ぶことがあるらしい。悠は変わった。必死で、不安と戦いながら、孝一をパートナーとして理解しようとしていていたのだ。
 腕の中で、悠が涙をこらえていた。悠は孝一を責めたりしない。ただ、自分の心の中で、必死に事実と戦っている。そこが、孝一と決定的に違うところだった。何の責任もない医師を責めたりした、孝一とは違う。自分を変えようとしている。感情を誰かにぶつけて、自分を保とうとするのは、楽なのだ。そうしてしまえば現実から逃れられる。それは孝一自身が言ったことだ。『要は・・・受け止め方の問題さ。人が物事をどう受け止めるか・・・人生の大半は、それで決まることが多い』孝一はそれを間違えた。しかし・・・悠は・・・(「雨に歌う譚詩曲」より)

 この場面が作品の自分では肝と考えてます。それぞれの悲劇に正反対の態度で対応した2人。物事はその人の受け止め方次第。陳腐だけど、それだけの軌跡を描いてきただけに妙に心に残ります。まぁ自分がこの作品と相性が良いのが一因とは思いますが・・・