不遇のライター青山拓也

  • 『想い出の彼方』(PL+US)

 恋をした。なかなか告げらずやきもきしていた日々。意を告げた結果は、彼に意に沿うものではなかった。その直後、彼女が唐突に自殺する。その理由も明かされないまま・・・あまりの事に気持ちに整理ができない主人公。その後逃げるように故郷から離れた。
 そんな出来事から、5年後同窓会の通知が届き、再び故郷に帰ってきた。止まっていた時計が再びゆっくりと動き出していく・・・

 

 あらかじめ言って置きますが、これからの話は5つあるメインと思われる2つのシナリオの事です。何故全体の感想を書かない理由は、後ほど書きます。

 
 最初の書き出しで書いたように、決して楽しいものや萌えるものではありません。むしろ暗く一般のユーザは、敬遠するテーマであり、ストーリだと思います。それでも私が推すあるいは好きな作品なのは、それだけの力量がある作品だからと思います。

 
 どこの点が面白いとかそのような感想は、漠然としていて全く思い浮かびません。特筆すべき点は、登場人物の心理描写が非常に巧みな点です。まるで本当に存在するようなリアルな登場人物が、この物語を織り成します。ある者は、ぎりぎりまで悩み抜いてどうにか答えを見出したり、ある者は「異界」に取り込まれそうになります。ある者は、溜まりに溜まった感情を曝け出します。ある者は、過去をキチンと整理して生きていたり・・・このように登場する人物の一人一人がまるで、現実に生きている人間のように動き出します。その心は綺麗なものがあれば率直に汚いものまで、率直に描かれています。

 
 この作品の欠点は、ルートが完全に制限されています。美緒、葉耶香、ひふみ、有紀、緑と完全に展開していきます。何故制限されているのか謎です。本来ならメインヒロインの葉耶香を持っていくのが、正解だと思いますが・・・またシナリオごとの出来もストーリーを経るごとにクオリティが低下していきます。正ヒロインでこの作品のテーマであるシナリオの出来が素晴らしく高く、次いで彼女と対になる美緒。正直ここまでが以上に高く、ここで終わらしていくのが吉。葉耶香シナリオのラストは、感慨深いものですし・・・そして、ひふみシナリオまでが許容範囲内です。他の2人は、そのヒロインが気に入ればやる程度でよいでしょう。

 
 メインのライターは、青山拓也氏。一般的には、「ONE2」のメインライターと言えば通りやすいかもしれません。心理描写に非常に優れ、起承転結の起承転の部分までは、非常に上手いのですが「結」の部分がなおざりになりやすい傾向を持つライターです。

 
 また、不遇のライターでもあります。デビュー作である『蒼刻ノ夜想曲』はともかく、今作品では意味不明のフラグ制限があったり、『ONE2』では当初のあまりのシナリオの出来に急遽姉妹メーカーから引き抜かれ尻拭いを・・・まぁ、『屍姫と羊と嗤う月』だけはこの言い訳は出来ないかもしれません。あれだけ煽った挙句あれじゃ。(煽られて煽った一人w)また、最新作では『春恋*乙女 〜乙女の園ごきげんよう。〜』不得意な設定に、無理矢理自分の作風を入れ不興を買ったり、今度の新作は女版三国志ですか?


 最後にオススメの方は、詳細な心理描写を好まれる方、テキストを隅から隅まできっちり読む方。彼のテキストには、普段のエロゲーにある読む手を抜く場面がないので、キッチリ読まないと振り切られます。それにそこが長所でもあります。


 頼むからまともにせっかくの逸材の青山氏に合った企画にして下さい。本当にお願いします。どうしてネクストン系であれだけ豪快に迷走するのですかねw

 
 青山さん逃げて〜が本音であります。