数字の魔力

 よく世間では格差社会になりつつあると言っています。私の実感としては、正社員などの正規社員の比率が下がり、パート、アルバイト、契約社員、派遣契約社員などの非正規社員の比率が上がったと思うのが精々です。確かに正社員よりも派遣の方が総合的に見ると一部の例外を除き、賃金に格差があるのは確かです。ただ、正社員も賃金がカットされたり、あまり上がらなかったりします。それを見ると一概に格差が開いてると言えるのかが問題になります。私の家は貧乏人ですので、あまり「勝ち組」と言える人間に会う機会がありません。ですので上を知らないので、果たして格差があるのか疑問だったりします。今までも富めるものは富めるものに、貧乏人は貧乏人にと普通にあることなので、そこまで深刻に考えてません。

 
 ただ、格差の流動性が狭りつつある現状はあると考えています。例えば東大生の親の収入を見ると、高収入の人間の比率が多くなったりしているようです。本来、最高学府である東大に入れる人材が、親が高収入であることはあまり関係ありません。やはり、教育に掛ける金が違いこのような現象になっていると思います。将来を担うエリートが同じ階層になることは、好ましいとは限らないこと。門戸はどの人間にも開かれていないと、人材の流動性に欠け人間で言うと動脈硬化のような現象になると思います。
 あと正社員と派遣社員との賃金の格差よりも、正社員になる機会の少なさや「技術力」の格差が大きいと考えています。サービス業などはあまり関係ないことですが、製造業になると正社員が技術力を持ち、それに伴うノウハウを持っています。派遣は、単純な労働に終始し、技術を磨けずにそのままの使い捨てにされる事態になる。そのような派遣が多くなれば、それを管理する現場の正社員の負担も増える一方。だからと言って、技術を教えるのは一朝一夕になるものではなく、短く見積もっても3年は掛かるでしょう。その間に、派遣が辞められたらただの徒労。派遣の利点は、自分に合った職場に行けて自由に辞めるのがそうですから・・・それに、いつ辞めるか解からない人間に、会社の財産でもある技術を教える馬鹿はいないと考えるのが普通でしょう。
 非正規社員を1つの生き方を見るのは妥当だと思います。人には様々な生き方がありますので、自分に合った労働形態にするべきでしょう。ただ、そのような人間を調査してみると、正規社員になりたがっている人が少なくありません。そのような人は大手に固執せず、中堅や中小企業で自分の技術を磨くのも一つの道だと思います。中堅以下ですとまだ正社員中心の雇用形態は珍しくありません。ただ、1人の力の比率が大きくなる為、責任は著しく重くなりますが・・・
 あと、気になるのは大手の雇用形態です。派遣を多くして品質を維持できるのか?正社員の負担は大きくならないか?心配でもあります。今の状態が非常手段と認識ならいいですが、恒常的になるなら企業自体も抜本的な改革が必要になると思います。

 
 格差社会の根拠になっている数字になっているもののいくつかがあります。生活保護世帯の増加、学校給食費免除の人数の増加、学費未払い生徒の増加などが収入と共に上げられてます。そのような数字が、果たしてきちんと分析した結果だろうかと思う件に遭遇しました。従姉の家に遊びに行ったことのこと。従姉が、2人目の子供の給食費が免除になってラッキーと話してました。自分には信じられない事でしたし、おそらく隣にいた母も同じ心境だった思います。私が子供の頃は、普通に払う物だと思って払ってましたから、親も給食費の免除の申請を考えることはなかった思います。それにほとんどの子供がキチンと払っていたと記憶してます。従姉の現在の家庭が私の子供時代の家よりも貧しいとは思いません。それに彼女の家庭に比べ、親戚付き合いや家で宴会などを開く費用などを考えると、私の方が貧しかったと考えています。
 これはホンの一例でこの件のみで全体を語るのは、早計かもしれません。ただ、国民というよりも世代間の意識の変化も含まれると思います。昔なら払う物は払う物。お国の面倒には世話にならない意識が強かったし、それを恥とする意識があったと思っています。生活保護など子供ながら凄い事なんだろうと意識がありました。それに比べその子供の世代、私やその少し上の子供を持つ世代には、その意識は薄く、利用できる物なら利用する。そのような強かな意識が存在すると思います。今は年金生活が出来ないなら、生活保護でも受けた方が言うのを聞くのも決して珍しくありません。それが良い物か悪い物かは、その者の意識次第。数年前に子供と一緒に餓死した母親のように、どうして生活保護を受けなかった皆一様に嘆いたのを考えると難しい部分があります。ただ生活保護給食費の免除など国民の意識の変化もあると思います。昔は申請せずに、じっと我慢をしていたそんな世代50〜60歳代の人間には多いと思います。ですから、ただ増加したから格差が広がった貧しくなったと簡単に結論を論じるの早計です。

 
 数字というものは簡単に結論が見えてくるものです。数字を出して論じる事は単純なこと。ただその単純さだからこそ簡単に、最近の事象に付け合わせ論じがちになりやすいです。単純だからこそ、どうしてこのような数字が出たのかを、多角的な視野で慎重に吟味しないと思わない間違いを犯す場合があると思います。